最弱救世主とドS騎士
「りっ……リアム」
私は声を出せただろうか。
しっかり声を出したつもりだけれど、もしかしたら口パクで音にならなかったかもしれない。
頭の中が真っ白になる
身体が動かない
想定外の出来事すぎて
どうしていいのかわからない。
リアムは課長の奥に潜んでいた私を見つけて表情を変えた。
「リナ」
リアム?
やっぱりリアムなの?
ふたりの目線は絡み合い
私は涙で彼の姿がゆがんでしまう。
リアムは上司たちの間をかきわけて、まっすぐ私の前に立つ。
先導していた社長はきっと驚いているだろう。
「リナ」
私の名前を呼ぶ低く響きのある声は、間違いなく私の愛する人だった。
「捜す前に現れた」
「真っ先に探してよバカ!」
最高の笑顔を見せる彼の胸に何も迷わず飛び込んだ。
上質なスーツはいつもの騎士団の服とは違って柔らかい。
「もう二度と離れない」
泣きながらそう私が言うと
「俺が絶対離さない」
耳元で彼がそう言い強い力で私を抱きしめた。
この懐かしい感触はリアムだ。
あらためてそう思い
また私は彼のスーツに涙を流していた。