最弱救世主とドS騎士

テーブルの上にある書類を見つけ、突っ張るぐらいに手を伸ばしてつかんでから、リアムの頭をパンと叩く。

「痛っ」っと言ってから、いつもの不機嫌そうな顔。リアムのいつもの顔を思い出して笑ってしまう私。

「そっちこそ落ち着いて」

ふたりで顔を見合わせると、リアムも笑う。
時間が後戻りする。
月を眺めながらペガサスの背でワインを飲んだ日が蘇る。

もう二度と会えない
自分の妄想だったかもしれないと思った愛する人が、目の前に居る。

「悪かった」
紳士らしく私の手を取り、ソファに座らせてからリアムは腕時計を見た。

「もう退社時間だ。5時になったらとりあえずここから出て俺の部屋に移動しよう」

「部屋があるの?」

「城より狭いが」

「魔法で移動する?」

「魔法の車で移動する」

彼は立ち上がり自分のデスクから車のキーを私に見せてくれた。
きっと高級車だろうな。
てか車の運転もできるのね。

「もう魔法は使えない。普通のリナと同じ種類の人間だ」
自虐的に笑うリアムを見て、私はハッとしてしまう。

「私のせい?」
マントをひるがえしペガサスに乗り、エリート騎士団のトップとして輝いていた騎士団長。誰もが憧れ尊敬していた彼が魔法を使えないなんて。

「気にするな、俺が希望した。リナの為なら何でもできる」

不安そうな私の頬にキスをして「ゆっくり話をしよう」と言ってくれた。

長い夜になりそうです。
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