最弱救世主とドS騎士
「ずっと身に着けてくれてありがとう」
リアムは私の左手の中指にキスをする。
リアムのお母様の形見である大切な銀の指輪。

「リナの気配をこれで見つけた。アレックスがこっちの世界に飛ばされたとわかったのも、この指輪のおかげだったから」

「お母様の指輪が私達を繋げてくれたんだ」
そう思うと感慨深い。
リアムは百合の紋章が描かれている指輪のをそっと撫で、私の頬にキスをする。

「何があろうと連れて戻る予定だったけど……リナは覚えているだろうか?『自分が居ない間、あちらの世界はどうなっているんだろう』と俺に聞いていたよね」

「うん。たぶんもうひとりの私が居て、そのまま何事もなく暮らしているだろうと答えてくれた」

「そう思っていたのだが、リナが戻ったのはこちらにトリップした場面だった。私達と過ごした時間はカウントされてない」

たしかに
私は夏をあちらとこちらで二度過ごしていた。

「俺たちの考えは間違っていた。リナを連れて戻るにはひとつのミスも許されない。だから慎重に動かなければ全てが狂うから、俺達は色々と考えた。どうやってリナを連れ出そうかと。自分たちの世界でリナの行動を追い、この世界を調べて勉強していたら……リナが母親と電話をしていた」

「こっちから連絡しないから、よくかかってくるんだ」
恥ずかしそうに答えてしまう。
もう大人だけど
いつまでたっても親は親で子供は子供なんだよね。

「それを見ていて、もしかしたら……リナを俺達の世界に連れて行ったら……そんな時間も失うんじゃないかと思った」
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