最弱救世主とドS騎士

目の前でシルフィンが歌って踊ると、お兄さん達もテンションMAXで一糸乱れぬ見事な動きで踊り出す。通りかかった外人さんが「OH!ジャパニーズオタク文化!」と言ってスマホをかざしていた。

「これって?」

「今夜ライブがあるから、そのパフォーマンス」
リアムは普通に答えてくれるけど
アレックスの右腕ともいえる有能な魔女が(それも暗殺系)目の前でキレキレに踊ってる。踊るたびにツィンテールが揺れて可愛いらしい。白のセーラーカラーの胸元には大きなピンクのリボン、水色のミニスカが踊るたびにフワフワ揺れる。歌も上手いしダンスも上手い。そして可愛い。完璧アイドルです。

二曲ほど歌ってからシルフィンは「今夜また会おうねー」って腰の高さで両手を付き出し、可愛くバイバイと手を振って退場してしまった。残されたお兄さん達はシルフィンを見送り、行儀よく静かにその場からサーッと去る。去り際もお見事です。いい物見せてもらった。

見学している人達も散り始め、私はリアムに手を引かれて近寄ると、機材を片付ける騎士団スタッフの横でひとりの男性がスーツ姿の人と名刺交換をしていた。

「ええ……大丈夫ですが……その時間は娘の保育所のお迎えがありますので、時間をずらしていただくとありがたいのですが……」
どこかで聞いた声。
そしてその佇まい。
黒のジャケットに白いシャツ。ジーンズ姿の男性は何度も頭を下げて目の前の人と笑顔で話をしながら、目線をずらして私達を見た。

背の高い
優しい癒し系の顔を持つイケメンは……アレックスだった。
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