最弱救世主とドS騎士
夫はテーブルに目線を移し、ワインを見て嬉しそうな顔をする。

「今年も送ってきたんだ」

「うん。お礼状を書きたいけど、住所がいつもの通り載ってなくて」

「電話するからいいよ」

「私もお礼を言いたいから、電話する時に替わってくれる?」

「うん……あ、もしかしたら……」
ネクタイを緩めてスーツの内ポケットから彼はスマホを取り出した。そして「ビンゴ」と私に言ってから電話に出る。

阿連さんだ。すごいタイミング。

「アレックス?あぁ……届いたよ」
あれん くす
勇翔はフルネームで彼の名を呼び電話に出てる。
フルネームが彼のあだ名みたいなものなのかな?

「ん?ああ、奥さんも元気で子供も元気。そっちは変わりない?えっ?結婚?お前が?……ジャック?そうかやっと念願叶ったんだ。それはおめでとう」
外人のお友達の名前かな?
耳を大きくして会話を聞いてしまう。

「へぇ……すごいね。劇場が増えるのはいい事だ。地下劇場にこだわらなくてもいいんじゃないか?」
すごく楽しそうに会話をしている。大切な友達なんだね。早く私も電話に出たい。

「うん。そう、これから二人きりでディナー……お前も元気で、みんなによろしく」
勇翔はそう言い
あっさりと電話を切ってしまった。
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