最弱救世主とドS騎士

「救世主様と思えば、ただの行き倒れでした。そうぞ王の意のままに」

「うむ。好きにしていいのだな」

「御意」

そんな会話を目の前にして身体が震えてしまう私の頬を、王は優しく触れる。

「冗談だよ。怖い目にあったのだろうかわいそうに。リアムは乱暴だからね」
急にくだけて優しい口調になり、吸い込まれそうなエメラルドの瞳で私を見つめた。

王様……いい人。
隣のツンデレ男より上から目線のユニコーンより、きっといい人。

「名前は何と言う?」

「宮本里奈です」

「リナ?いい名前だね」

「ありがとうございます」

「さて……リナはどこから来た?」

「私は……」

ここで
本当の事を言っていいものか
何があるかわからない世界
なんとなく
本当の事を言えば、隣の男にバッサリ斬られる可能性もなきにしもあらず。

私はこっそりエレベータの中でもらった赤い指輪の玉を、クルリと内側である手のひら側に隠す。

「私はここではない世界から飛んで来たと思います。エレベーターの中で気を失って、気付けば海岸でした」

「エレベーターとは?」

「エレベーターとは……えーっと……四角い箱で……」

エレベーターの説明から始めなきゃいけないのかいっ!
たどたどしく説明してると、首筋に冷たいものが当たる。

隣の男の鋭い剣だった。

ギャー!!
殺されるーー!!



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