最弱救世主とドS騎士

「そんなものがあるわけがない!」
頭っから全否定男め。
絶対出世しないタイプだろう。

「あります!そりゃ……私があなたの待っていた救世主様じゃなくて悪かったけど、私だって好きで行き倒れになってたわけじゃないし、いきなりこんなわからない世界に来ちゃって……どうやって帰ればいいのかわかんないし、大切な会議もあったし……不安でたまらなくて夢なら早く覚めてほしいし……剣もあなたの迫力も怖いし、ユニコーンは上から目線だしお腹空いてるし……結婚しようとおもってた男に捨てられるし……怒りたいのはこっちの方なんだんだから!」
怒り心頭で鋭い剣を持ってる男の腕を突き飛ばし私は怒鳴った。
怒りというより

本当は泣きたい。

目が潤んで
知らないうちにポロリと大粒の涙が溢れる。

すると

「かわいそうに」と優しい声で王様は私を包み、長い人差し指で私の涙を触ると涙は白い真珠に変わった。

「自分の家に帰れるまで、私の城でゆっくり過ごしなさい」

「王様」

「私の名前はアレックス。リナの話はよくわからない部分もあるが聞いていて楽しい。また、明日ゆっくり話をしよう」

王様は癒し感溢れる言葉と顔でそう言って、私の涙である真珠をベストのポケットに入れてくれた。

「心配しないで、大丈夫だよ」

「あじがとうござびます(ありがとうございます)」
地獄で仏ってこれか。
リアルことわざ辞典。

泣きながら感謝していると、グイッと身体を引かれて私の身体は王様の腕に入り強い力で抱かれてからの、顔が迫って来て唇を重ねていきなりのキス。

初対面で王様にキス。
あまりの驚きに反抗もできなかった。
そして王様は耳元で「本当の話はまたゆっくりと」と囁く。

ヤバい!
全部バレてる?


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