最弱救世主とドS騎士
サーッと血の気が引いた気分になってたら、王様はふわりとまた微笑み私に背を向け「大司教を待たせているので失礼する」部屋を出て行ってしまった。
残されたのは
私と乱暴な怖い男。
「王は……女好きだ」
「はい?」
「気をつけろ」
笑顔もなくそう言われ言葉が出ない私。
タラシですか?王様。
「部屋に案内する」
「はい」
付いていくしかないだろう。
私は男のマントを被りながら、豪華な部屋を出る。
これからどうなるんだろう。
よくラノベで読む異世界に飛ばされたってヤツだよね。あぁもっと真剣にこの手の本を読んでおけばよかったよ、異世界ゼンゼンわからない。元の世界ってどうなってるんだろう。私が急にいなくなったことになってるのかな。お母さんや友達に心配かけてるかもしれない。今日の午後からの会議も……小さな出世の第一歩かもしれなかったのに……がっかり&不安で胸がいっぱい。
トボトボと男の後ろを歩いていたら
「すまなかった」
そんな静かな男の声が聞こえた。
「俺はお前の言った通り焦っていた。きつい言い方をして悪かった」
落ちまくる私のテンションを自分のせいと思ったのか、救世主じゃなくてガッカリしたのかよくわからないけれど、男は私と同じテンションで私に謝る。
お互い様か。
「私もごめんなさい」
私も謝ると男はプイとまた正面に顔を向け、背筋を伸ばして前へと進む。
騎士団長って鳥青年が言ってたっけ。スラっとして男らしくて強くていい人かもしれない。
すると急に足を止めて振り返り
「だからと言って、変な動きをしたら遠慮なく斬るぞ」
上から目線でそう言った。
前言撤回
いい人じゃない
ただ顔がいいだけのドS男だ。