最弱救世主とドS騎士
狩られた獲物のようにリアムの肩に揺られ、連れて行かれた部屋は小さな部屋。装飾品もなくシンプルな部屋で丸いテーブルとイスが3つあった。取調室か?
「座れ」と言われて降ろされて、ストンとイスに座ると私の真向かいにリアムが腕を組んで座る。
ジッと見つめ合う私達。
ブラウンとグリーンが混ざったヘーゼルの瞳に吸い込まれそう。こんな状況だけどつい見惚れていたら、プイとあっちから目線を外した。
そんなに
嫌わなくてもいいじゃないの、少し寂しくなってしまう。
「お茶でも飲もうか?」
いつの間にか現れた王様が銀のティーセットを魔法で出し、細い口金から誰の手も借りず自力でティーポットはカップに紅茶を注ぎ始める。
「わぁ」と、喜んで目の前のイリュージョンを見ていると王様は「お疲れだね。砂糖も入れようか」って言うと、今度は可愛らしい角砂糖が銀の皿から踊り出し、勝手に目の前のカップに飛び込んだ。
思わず拍手をして、笑顔の王様と喜んでいると
「王は邪魔しないで下さい!」
リアムの声がまた響く。
ゆとりのないヤツだ。
小さくなる私と王様。そんな様子は無視してリアムは「元の世界に戻れないのなら、ここに住むしかないだろう」
って私に正論をぶっかける。
たしかに……そうです。
これが夢かもしれない。めちゃくちゃリアルな夢だけど、でも夢も覚めなきゃ元の世界に戻れない。いつ覚めるのかはわからない。
夢じゃなくて
万が一、よくラノベにあるように異世界に飛ばされたのなら、これこそいつ帰れるかわからない。戻れないかもしれないと思うと背筋がゾッとして一気に身体の温度が冷えてきた。