最弱救世主とドS騎士
「でもね。みんな魔法を使えるなら働かなくてもいいんじゃない?」
だって
何でも出せるし不自由ないでしょう。
不思議そうに聞く私にシルフィンは首を横に振った。
「全て完璧に使えるのは王様だけなのです。王様に不可能はありませんが、私達はそこまでできません」
「そうなの?だってシルフィンは何でもできるよ」
「私は……そうですね。人より少し使えるので城に置いてもらってます。でも普通の人達は最低の危機管理能力と自分の仕事に使う事だけ魔法で使えます」
「たとえば?」
「そうですね。たとえば子供達はほとんど使えません。学校で物を移動する魔法と、悪霊に捕えられた時の危機回避魔法を学びます。急に現れてもバリアが使えたり、自分の意識を隠して物と一体化させたり、高度ですが自分が瞬間移動できるようにです」
「なるほど」
襲われないようにが基本だ。
「王様が国に結界を張っているので、そんな変な悪霊はいないはずですが、森に狩りに出るとか旅に出るとか悪霊と出会う機会が無いとは限りません。大人になると、火を上手に使えます。台所やロウソクの灯りなどです。あとその職種によって人それぞれです。パン屋のおかみさんは魔法でコネてかまどの微調整ができます。粉屋のご主人は重い石臼を魔法で使えます。庭師は大きな枝切りハサミを魔法で動かせます」
一般人は最低魔法と臨機応変能力だ。
「裁縫士は布を裁断して針を動かす魔法が使えます。宿屋のおかみは食事と掃除の魔法を使えます」
臨機応変能力
うちの課で使えたらいいのに。
「でも……魔法を使うと、それなりの物しか生み出せません。自分の手で針を動かし、自分の手で丁寧に野菜を切って味付けをすると、格別に出来上がりが違います」
だよねー
手間をかけると違うのは、どこの世界も同じか。