最弱救世主とドS騎士
イラつき気味のリアムはジャックに「第一部隊と合流して街の見回りに行け」と早口で言い、ジャックは背筋を伸ばして「はい!」と返事をしてダッシュで行ってしまった。
さっきまで声を上げて笑って楽しく過ごしていたのに、急に断ち切られた気分になる。残念だ。
まぁ
この世界で私はお荷物で、お世話になる立場だからしょうがない。突然こんなのが現れたらみんなの仕事も増えるよね。ごめんなさい。
リアムは城門を魔法で開き歩き出すので、私も後ろを小さくなって歩いていると
「ジャックには笑うんだな」
ってボソリと言った。
はいぃ?何それ?
意味不明な一言ですよ騎士団長様。
「ジャックには楽しそうに笑うんだな。俺にはそんな顔は見せないだろう」
急に後ろを振り返りムッとして言われたので、こっちも反射的にムッとなる。
「私とリアムは、出会ってから楽しい会話してましたっけ?」
「笑顔くらい見せてもいいだろう」
「そっちだっていつも怒った顔ばかりしてるでしょう。笑って欲しかったら自分から笑いなさいよ」
「俺は元からこんな顔なんだ!」
「私だって元からこんな顔なの!」
「やっぱり可愛くない女だ!」
「上等じゃん騎士団長様!いくらみんなに尊敬されても、私はあなたみたいなドSでスネた男は大嫌い」
「好かれたいとは思ってない」
「こっちだって」
売り言葉に買い言葉
ふたりで大きな声を出していたら、きらびやかにアレックスが魔法で登場した。
そして「仲がいいね」とツボに入ったように笑いが止まらないので、リアムはマントをひるがえして「失礼します」と行ってしまった。
「逃げられたか」
アレックスは黄金の髪をかき上げまだ笑う。
もう……知らない。