最弱救世主とドS騎士
「お待ちしておりました救世主様。我が国を救って下さい。我が王を救って下さい。偉大なる魔法使い様」
夢にまで見たこの瞬間
リアムは生まれて初めて震えながら声を出す。
「信じておりました。我がヴィストロバニ……」
「お兄さん……どなたですか?ここはどこですか?てか外人さんですよね。馬?本物?言葉……日本語通じるのはナゼでしょう?」
リアムより震えた声を出し、女はリアムの言葉を遮った。
「ニホン語とは?」
「だってここ……日本でしょう。だって……あの、私は会社の中にいて、これからお昼で、その……あの……えーーーっ!何これドッキリ?モニタリング?いやいやスケール大きすぎる。私はただのOLですよ」
女は大きな声を出しながら、いきなり立ち上がりうろたえていた。
違う
嫌な予感でリアムの頭はガンガン鳴り響く。
「救世主様?」
「誰が?私は宮本里奈(みやもと りな)株式会社 エースツーの総務部勤務。27歳。男に振られて仕事に生きる女で趣味は……どうでもいいから、ここはどこ?あなたは誰?」
「救世主ではないと?」
「いっぱんぴーぷるです」
「魔法は?」
「そんなの使えません。使えるわけないでしょう。それより早く戻して下さい!午後イチで大切な会議があるのですが……太陽が沈んでる?会議終わった?」
ギャーギャー叫ぶ女を目にして
リアムの口から大きなため息が出る。
救世主ではない
こいつはただの行き倒れだ。
期待した自分が悪いのか……この憤りをどうしてくれよう。
リアムは岩をも砕く自慢の剣を取り出して
怒りに震える腕を制御しながら
頭を抱える女に切っ先を向けた。