最弱救世主とドS騎士
「母はどんな様子だった?」
それを聞くアレックスの様子は一国の王ではなく、母を想う素朴なひとりの青年の顔をしていた。
「美しい人でした。透明感と気品を兼ね備えたとても美しい女性でした。ゴージャスな亜麻色の髪を生まれて初めて見て見惚れてました」
「うん」
アレックスの微笑む顔が美女と重なる。
「狭いエレベーターの中で私の手を握り、何か私には聞き取れない異国の言葉を言ってエレベーターを降りました。ほんの一瞬の出来事でした。そして握られた手を見るとこの指輪があって、何をやっても外せません」
「他の者には内密にしておこう。その綺麗な指を切り指輪を奪う者が現れたら困るから」
それは絶対イヤだーー!
「母の言葉を思い出して欲しい」
「思い出したいのですが、聞いたことがない言葉で……」
何やら難しいイントネーションだったな。
頭を悩ましていたら、アレックスが立ち上がり私の腰を抱く、そして真剣な顔で「リナの記憶に少しだけ入り込んでいいかい?」そうお願いされた。
こんなイケメンに至近距離でお願いされて拒めるワケがない。お世話になってる身だし。
私はうなずくと「ありがとう」と、いきなり唇を重ねてきた。
キス?キスですか?
アレックスの唇は軽く重なってから味わうように深く舌を絡ませ、私の膝が崩れる。
膝が崩れるようなキスって……こんなキスなんだ。
アレックスの唇から解放されても、私は身動きできずに彼の身体に包まれたままだった。