最弱救世主とドS騎士
「苦しかったかい?」
「いえ……あの……」
苦しいというより凄かったですという素直な感想を言うのは恥ずかしい。
顔を赤くしてアレックスの腕の中にいると
「母の言葉がわかったよ」
「えっ?」
「リナの記憶を少しだけ覗けた。ありがとう」
アレックスは穏やかな顔をして、うっすらと目に涙を浮かべていた。
お母さんからの言葉を私が時を次元を超えてアレックスに伝える事ができたのなら、こんなに嬉しい事はない。
お母さんからの言葉を教えてもらおうと思っていたら、先にアレックスが私を胸に抱きながら「さっきの話にはまだ続きがあってね。時は流れ、私は死の淵から生還し周りの人間に支えられてまた国を再建した。平和に暮らしていたけれど、去年悪い大魔王に目をつけられて……命を狙われている」
「そんな」
「私とフレンドはあと三ヶ月の命なんだよ。秋の祭りになると強い魔王が現れて私とフレンドは命を落とす」
フレンドも?
あのまだ子供のドラゴンも?
驚きの続き話に私の頭は回らず言葉も出ない。
「気まぐれに国を滅ぼす大魔王がいてね。大災害の一種と思って欲しい。よその国が滅ぼされている話は聞いていたが、まさか我が国が狙われるとは思わなかった。去年現れて宣言されたんだ。『一年後の秋の祭りに国を滅ぼす。それが嫌なら王の命とドラゴンの命を渡せ』と」
「アレックスが退治してよ。そんな悪い魔王なんて」
「一瞬で国を滅ぼす力を持っているんだよ。去年も大変だった。今日行った神殿も被害にあった一部だ」
「そんなの嫌だ」