最弱救世主とドS騎士
「動かせ」
小さなテーブルの上にある鉛筆を、私は集中して見つめていた。
動け動け!
勢いよく転がれっ!
一応やるだけやってみる
環境が変われば私も魔法が使えて、ラーメンぐらい出せるかもしれない。
屋台を出して稼いで大金持ちになって、お城から独立してセレブになってやる。
でも鉛筆は1mmも動かない事実。
悲しい
独立は遠い。
グッタリとテーブルに突っ伏すと、消しゴムが飛んで来た。
「集中が足りない」
「休憩しようよ」
先生が厳しいから疲れてしまう。
私はそのままの体勢で空を泳ぐフレンドを窓越しに見る。
楽しそうでいいなぁ。
リアムは自分が投げた消しゴムをジッと見ている。
珍しいんでしょう。
消したくなったら魔法で消せるから、消しゴムなんていらないもんね。
でも私にとっては必要なのよ。
「増えたな」
「うん。もっと増やしたい」
小さな本棚には私の手作りの絵本が並んでいた。
A4サイズのノートと色鉛筆と消しゴムを用意してもらって、私は思い出しながら元の世界の童話をノートに描いていた。