最弱救世主とドS騎士
「リナ?」
「あ……ごめんなさい」
ついアレックスの苦悩を考えていたら、気持ちがどこかに飛んでしまったようだ。
リアムだって忙しいのに来てくれてるのに、ごめんなさい。
「今日は止めよう」
「いや、まだ頑張れるよ私!」
集中集中!
この世界に慣れて、みんなの力になれるものならなりたい。自ら鉛筆をまた定位置に戻して集中していると、リアムの手が伸びて私の髪をくしゃっと撫でた。
そのままの状態でリアムを見ると、優しい目をして微笑んでいたので思わずドキリとしてしまう。
「また明日にしよう。明日は厳しくする」
そして
ふわりとマントをひるがえし、静かに部屋を出て行ってしまった。
優しく穏やかな顔だった。
同じ優しい微笑みでも
アレックスとはまた違う
アレックスは慈悲の心で癒しの微笑みだけど
リアムは波の立たない海のように
静かに深く穏やかだ。
いつも怒っているくせに
たまにそんな顔を見せるから
本当に
ズルいよ……。