最弱救世主とドS騎士
空が近い
急上昇からの急下降で、私はフレンドの角にしっかりしがみつく。
「リナを乗せて喜んでいる」
悠然と風を受け語るアレックスの隣で、私は必死で笑顔も引きつる。
飛行機以外で飛ぶのは初めてなので、お手柔らかにお願いします。
「フレンド。リナが怖がるからゆっくり動きなさい」
アレックスが言うと
フレンドはそれを無視して得意になってまた急上昇。
人の話を聞きなさいっ!
酔う
ドラゴン酔いする。
下唇を突き出してシートベルトなしの恐怖と闘ってたら、アレックスが私の肩を抱き地上を指さす。
「見てごらん」
アレックスの声に誘導され下界を見ると、その美しい景色に心が躍る。
綺麗に整理された石畳の道路におもちゃ箱のような家が並んでいた。レゴブロックの世界だ。
遠くの山の緑が綺麗。
斜面に並んだぶとう畑が美しい。
海岸線がよく見える。
海風が気持ちいい。
太陽が西に近づいている。
フレンドの背から黄昏の街を覗いてみたい。
全て忘れて
風を感じた。