最弱救世主とドS騎士

目を閉じて湿り気のある海の香りを感じる。

空は青いし
山は緑だし
海も青い

当たり前の色がこんなにも鮮やかな世界。

「目の前にその男がいたら私がすぐ石にして砕き、クラーケンのエサにするだろう。いや、生きながら獣虫のエサにしよう」

アレックスの言葉に笑ってしまう。

笑える私は幸せだ。

「アレックスは結婚しないって言ったけど、舞踏会で素敵な出会いがあるかもしれないよ」

「どうかな?私よりもっと心配な男はいるが」
アレックスは私にそう言いながら、地上を指さす。

それからフレンドに低空飛行を命じ、フレンドはゆっくり下降し砂浜で海を見つめる人影の上をグルグル周る。

リアムは今日も海を見つめて
救世主を待っている。

その姿を見て切なくなるのは何故だろう。

唇を噛んでジッとリアムを見つめていたら

「ここで降りなさい」と言われて、いっきなりアレックスは私をドラゴンの背から突き落とした。

きゃーーー!!
無理無理無理っ!

私は飛べませんーーー!!

顔面蒼白でどんな超スピードで落下するかと思ったら、アレックスが魔法をかけたのか私の身体はフワフワと見えないパラシュートが付いている動きでゆっくり落ちて行く。

でもリアムはいきなり落ちてきた私を見て、驚いて立ち上がる。
< 85 / 236 >

この作品をシェア

pagetop