最弱救世主とドS騎士
軽やかにターンを繰り返し
バイオリンの高音がホールを響かせて音楽が終わる。
いつもより重みのあるドレスで動いたせいか、息が切れた。
ワルツってけっこうキツいわー。
明日背中が筋肉痛になりそう。足より背中がピキピキしそう。
「もう一曲踊れるかな?」
アレックスは私の腰を抱きながらそう聞く。
連続ですか?
明日の筋肉痛はつらいけど、今日はお誕生日だもの、何曲でもお相手しますよ。
「魔法の靴をはいてるので大丈夫です」
息を整えて返事をすると、アレックスは優しく微笑み壁を見る。
その先にはリアムが立っていた。
騎士団たちと同じ白い正装だけど、彼が着ると高級感が漂う。
黒のスェードのブーツの折り返しにワンポイントで赤い斜線がおしゃれだ。
白い上下の軍服に金のバックル。
腕の折り返しと襟に金と銀の刺繍が入り、胸元に勲章が飾られていた。
「交代だリアム」
アレックスが声をかけるとリアムは静かに私達に近寄る。
「仕事中です」
「美女と踊れる機会を逃すのかい?」
「遠慮いたします」
「王の命令。私は領主たちのご機嫌をとる仕事があるのだよ」
アレックスは私をリアムに預けて、軽く逃げて行く。
残されたふたり。
気まずい。
あの血迷った海辺のキスから
私達はまともに顔を合わせてなかったのだから。