最弱救世主とドS騎士

そっと振り返り
リアムの後姿を見送る。

緩やかにまとめた長い髪が男の色気を漂わせる。背が高くて姿勢が良くて顔も良い。だから目立つし淑女のみなさんも彼に注目する。魅力的な人。アレックスが太陽ならば月のような人。

色んな意味で
遠い人。

せっかくのお祝いの席でマイナス思考はいけない。
今日はアレックスの誕生日。
そちらに集中しよう。
今夜一晩
転ばないように頑張ろう。

シルフィンとはぐれてしまった。
人が増えるほど、悪いモノが入り込む危険もあるから彼女も忙しいのだろう。
寂しいけれど美味しいごちそうを食べながら舞踏会見学だ。こんな機会はめったに……いや、間違いなく私の人生にないのだから。目に焼き付けよう。

きらびやかな世界を見ながら、ローストビーフを食べる私。
贅沢だなぁ。
デザートのプリンが美味しくて2個目に手を伸ばしていると、人が増えて来た。

今夜は国民に城が解放され
街の人達もそれぞれにおしゃれをして大ホールに流れる。

「リナかい?なんて綺麗なんだ」
「上手く化けたねぇ」

粉屋のご主人と宿屋のおかみさんが私に話しかけてきた。
知ってる顔が増えてきてホッと一安心。
すっかり町に馴染んだな私。

人が増えるほどに
ホールが気のせいか大きく拡大されてゆく

どこまで広くなるのだろう
ドーム越えしそうで怖い。

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