そして、失恋をする
『私の言ったとおり、陸君も悲しいんでしょ?』

「ごめん」

『謝らなくてもいいよ。陸君と同じ気持ちだったことに、私もうれしいから』

やさしく言った千夏のその声は、ほんとうに僕の耳にうれしそうに聞こえた。

『それにもしも逆だったとしても、陸君も私と同じ行動をするでしょ?』

「僕が一週間しか生きれないってこと?」

『そういうこと』

千夏は、あっさりとした口調で言った。

『陸君が一週間しか生きれない命だとしたら、病院から抜け出してでも好きな人に会いに行くでしょ?』

「会いに行くね」

『だったら私の気持ちもわかるし、私のやる行動も否定できないね』

「そうだね」

たしかに千夏の立場になって考えてみたら、僕だって病院から抜け出して好きな人に会いに行くだろう。それが、常識から外れていても。
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