暗闇の世界であなたを見つけた
*
「もう〜和くん意地悪しないでよぉ〜」
「ごめんって!双華が可愛すぎるのが悪いんだからな!」
甘えた女の人の声とそれをなだめる愛しい人の声。
澄みわたる空がきれいに見える最高なスポットの屋上で、お弁当を広げた。
中庭にいる先輩たちの声は嫌でも聞こえてきた。
ふと空を見上げると、太陽が熱く主張してきて、あの日のことを思い出した。
『ねぇ君もしかして迷子?』
オープンスクールに参加していた私はこの学校で迷子になった。
人見知りで、自分から話しかけれるタイプじゃない私は、ひとりでおどおどしていた。
そんなときに声をかけてくれたのが先輩だった。
目を合ったときにズンッと胸に感じた熱く焦がれるような感覚。
他人のようにあぁこれは一目惚れだって。
そう思った。
『この学校、広くて迷路みたいでしょ?僕が連れてってあげる!』
優しく笑いかけてくれて、それだけのことで私の胸はさらに熱を持つ。
ドキドキと甘い音を立てて心臓が脈をうった。
『…ありがとうございます』
やっとでた言葉は、ありきたりで聞こえるか聞こえないかくらいのボリュームだった。
『いいえ。何かあったらまた僕に声かけてね。』
低く心地良い声と優しく頭に乗っかった大きな手に、自分だけが特別にしてもらってることなんじゃないかと錯覚する。
先輩はきっと案内係だから誰にでもしてるんだろうな…。