暗闇の世界であなたを見つけた


学校を2人きりで歩く。

先輩はチラチラと私がちゃんとついてきているか確認してくれた。


少しの時間だったけど、付き合っているかのような感覚に陥った。


「かっこよかったな〜」


一人事のようにボソリとつぶやく。


誰にも拾われないその声は、雲一つない青空に吸い込まれていった。



入学して知った、先輩に彼女がいる事実。


告白なんかする前から失恋した。


でもどうしても諦めきれなくて。



辛いってわかってる。

胸がおしつぶされる。


それでも私は、毎日この屋上にやってくる。


先輩の近くに少しでもいたい。


どれだけ悲しくても、辛くても。


先輩を見れないことのほうが私は辛いから。



「痛い…。」


胸元をぎゅっと握ると、優しく脈を打つ心臓が切なくて。


この心臓はもう早く脈打つことはないのかな…?



無意識のうちに頬を伝う熱いもの。



ねぇ先輩?


私もあなたを思ってるよ。

私を見つけてよ。



「私じゃダメですか…?」



初夏の風に乗って私の声は消えていったーー。



< 3 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop