僕の喉が枯れるまで、空に愛を叫ぶ
01.
人生辞めようって思って屋上に行ったら、先客がいた。
◇ ◇ ◇
夕暮れが照らす屋上で、僕は可愛い女の子と向かい合って正座をしていた。なぜって? 僕もわからない。
女の子はグズグズ鼻鳴らして泣いてるし、彼女なし歴イコール年齢みたいな僕には彼女を慰めるなんて毛頭できるはずがない。
話しかけようにも突然「命は大切にしなよ」なんて言えるはずないだろ? だってこの子がいなかったら僕がこの世とおさらばしていたんだから。
彼女のセーラー服のリボンの色は青、僕のネクタイに付いているピンは赤。この高校は学年で色分けされていて彼女は1年、僕は2年。要するに彼女は歳下、僕は先輩。
きっと先輩だからなんかしらアクションは起こさなくちゃいけないんだろ? でも僕は期待に応えられないんだ、コミュ障だから。というよりそういう人だから人生諦めたんだし。
内心あわあわしながら今も泣き続ける彼女を見つめていた。うーん、彼女はすごく可愛いな。ただし、長い髪は僕の好みじゃない。
「あの」
「!? な、なに…?」
「止めないでほしかったです、正直」
涙を制服の袖で拭いてから真顔でそう言った女の子。やましい考えを頭から追い出す。
……そういえば彼女はなんで自殺なんかしようと思ったんだろう。そういうデリケートな話はしないのが吉だ、他人がどういう所で心に傷を負うのかはわからないから。
彼女はそんな疑問も勝手に答えてくれた。どうやら死ぬことを決意していたらしい。なのに僕が「え!?」って大きな声を出すからびっくりしたうえに、人が自分を止めてくれたことに心が揺らいじゃったそうで。
「責任とってください」
「な、なんの…」
「私を死なせなかった責任。私がこの世界に必要なこと知らしめてくださいよ」
そういって彼女は僕に向き合う。濁った目が僕を捉える。その目に底知れない何かを感じ、僕は思わず頷いてしまった。