相合傘
もう…どういうことなの…。
あたし、どうしよう…。
その時、ガラっと戸を開ける音がした。
え…。
もう、終わっちゃった!
帰っちゃう。
迷ってる暇は、もうない…!
そう思った瞬間、リュックつかんで
玄関へ向かっていた。
息を切らして玄関に着くと。
そこには…仁くんが。
外を見上げて立っていた。
え?
見ると、嘘みたいな土砂降りになっていた。
あたしの気配に、後ろを振り向いて…
ビックリした顔をした。
それでも黙ってる…。
傘持ってないの?と、聞くと。
ん?
んー。降ると思わなかったから。
と、苦笑いしてる。
あ、あたし…折りたたみ…持ってるよ?
え?でも、それ…一本でしょ?
あー、うん…。
でも、この雨じゃ…無いよりマシじゃない?
家近いんだっけ。
そうだけど…。
じゃあ送るよ。
あたし、バスだし。
あたし…なんでこんなに冷静なんだろ。
仁くん前にしたら、不思議と…
気持ちが落ち着いていた。
こんな急な雨に合うのも、最初で最後かもよ。
自分で言っていながら、心臓がズキンと
痛んだ。
最初で…最後…。
お願い…一緒に帰るって言って…。