相合傘
じっとあたしを見ていた仁くんが…。
ふっと笑って、
じゃあ…送ってもらうかぁ。と、言った。
また、あの笑顔で。
ジワっと涙が浮かぶのを、慌てて
ごまかして、
じゃ行こうか。と、元気よく言った。
傘を開いて、2人並ぶ。
仁くんが、ぷっと吹き出した。
え?
いや、ちっさいね。2人…はいる?
あー。折りたたみだからね。
答えながらも…距離の近さに、ドキドキで。
口がうまく回ってない気がした。
じゃあ、傘。
と、あたしから傘を奪う。
え?と、見上げて、また顔の近さにに
ビックリした。
いや…どう考えても、俺持った方が
いいよね?
あ…そっか。
傘もちっさいけど、佐々木もちっさいし。
と、笑う。
土砂降りの中…歩いてる人も全然いない。
思いがけない相合傘の中。
誰かに見られたら…という思いと、
誰か、見て見て!という思いとで、
顔が火照ってくる。
佐々木、今日面談1番最初だったよね。
終わってから何してたの?
急に聞かれて、え?あ、いや、と、
慌てるあたしを見て、
まあ、いいけどさ。と、笑う。
近くで聞く声が…耳に染み込む。
言いたいことあって。
実は、待ってた…。
え?あ、うそ。
…ほんと。
でも、隣の教室に…いたら。
先生の、声が…聞こえた。