相合傘
それから、一か月もたたないある日。
先生が、帰りのホームルームで、
仁くんが、転校すると告げた。
今日が、最後だからと。
驚くみんなの前で、
なんだよー、言わない約束だったのにさーと、
笑いながらも、短い挨拶をさせられていた。
友達に囲まれて帰って行く仁くんを、
遠巻きに見送っていたら、
さおりが、ポンポンと肩を叩いて。
さ、あたしたちも帰ろ。と、微笑んだ。
あの雨の日の話は、さおりに話してある。
フラれちゃったよと、電話したら
雨の中、飛んできてくれたから。
…帰る時、
下駄箱にメモ紙が入ってるのを見つけて、
心臓がドキンと打った。
震える手で開くと…一行だけのメモ。
忘れない。元気で。
泣き出すあたしを…
さおりが慌てて抱きしめてくれた。
きっと、両思いだったんだね…。
あんたたち。
仁くん…。
たった30分だったけど…想い出をありがとう。
元気で。
大好きだったよ。