うそつき
渡された楽譜は、さっきのものよりもだいぶ難しそうな楽譜。


まじか。


母さん、なんで僕がギター弾けるなんて言っちゃったの?


なんで、うまいなんて言っちゃったの?


めちゃくちゃハードル上がってるじゃん。


どーするの?


僕、恥かけばいい感じなの?



「…これ、わたし、好きなの」



上目遣いでそう言うもんだから、僕の胸は高鳴るし、弾きざるを得ない状況になってしまった。


できる、たぶんできる。


僕ならできる、たぶん。


そう言いながら最初のコードに手を置いた。


フゥっと息を吐くと、僕は演奏を始めた。



それから、演奏が終わるまではほんの一瞬のように感じた。


途中、チラチラと天使の方を見ると終始目をキラキラさせてほんのり嬉しそうに聞いていた。



「…か、かっこいい…上手だね」



手をぱちぱちさせながら嬉しそうに笑う天使。



「ありがとう」



そう言いながら彼女にアコギを返すと分かりにくいけどなんとなく、嬉しそうに楽譜と楽器を片付けていた。



ほんのり口角が上がっている。



そんな彼女をじーっと見ていると、目が合い、不思議そうな顔をするからニコッと笑った。


すると、何故か頬を赤らめ目をそらしベットに潜り込んでしまった。



「…~~っ」



「ど、どしたの?」



彼女は布団の中でもぞもぞと首を振っている様子。



そしてちらっと顔を覗かせた。



まだほんのり顔が赤い。



すると突然、彼女は僕の足元に目を向けた。



「あ、ゼリー」



「…今日も、くれるの…?」



「あー、うん、でもぬるくなっちゃった。ご飯のあとに持ってくるね」



彼女は首を大きく縦に降ると嬉しそうにベットからすっと抜けてパソコンを立ち上げて、また布団に戻った。



「また後でね」



彼女はこくりと頷くと、目を閉じた。



僕は部屋を出た。
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