うそつき
僕は後ろに果乃を引っ付けたままチョコレートを溶かし始めた。


「いい匂いする…」


「チョコだからね。ていうか、勉強はいいの?」


「んー…、今はくっついてたい気分なの」



そう言って果乃は巻きつく腕に力を入れると背中に顔を押し付ける。



「はにゃがつぶれりゅ」


「低い鼻がもっと低くなるよ?」


「やだっ、これでも気にしてるんだから…」



そう言って僕からさっと離れると鼻をおさえた。



「唯兎くんって、案外意地悪言うよね」


「いや?」


「嫌じゃないけど…」


「けど?」


「別に…嫌じゃない」



警戒したようにそう言うと、自分で言った言葉に顔を赤くした。



本当に、純粋で可愛い。



僕は振り返って果乃のほっぺにキスをした。



「〜っ、もうっ」



果乃の赤い顔はさらに赤くなり耳まで熱を持った。


果乃は僕に向こうを向かせて、また後ろから抱きついてきた。


振り返ろうとすると反対を向かれる。



「…見ないで」



うん、なんだろ。可愛い。



照れてる感じ本当に可愛い。


結局果乃はそのまま1時間くっつき続け、勉強道具をリビングの机に持ってきて、勉強を始めた。


構造的にキッチンから果乃がいる机が見えるんだけど…。


思いっきり寝てますね、この子。



一度チョコから手を離して果乃のとこへ行く。
< 104 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop