うそつき
それから走って帰る気にもなれず、なんとなく、果乃にも会いづらいと感じてしまっている。



それでも歩いていたら自然と家に着くもので。


仕方なく玄関の鍵を開ける。


そのまま、いつものように一直線に果乃の部屋へ向かうと、中からキャピキャピとした声が聞こえて来た。



「ユキちゃん、なんでそんなに可愛いの?


どしてそんなに可愛くなっちゃったの?


毎日うちにおいで?


私と遊ぼう?」



主に果乃の声が。


めちゃくちゃ嬉しそうに、つらつらと言葉を並べる果乃は楽しそうで。


これが女の子と男の差なのか、と、前からわかっていたのに実感してしまった悲しさが後から追いかけてくる。


心配だったけど、今日も明日も、僕はいらないかな。


僕の胸がちくりと痛む。



今まで必要とされてきたのに、急に飽きられてしまったみたい。



和馬は部活で今日の帰りは遅いし、とりあえずご飯の準備をのんびりするか。


僕は一度部屋に戻ると着替えて、キッチンに向かった。


すると、そこには。



「あぁ、ユキちゃん。どうしたの?」


「いや、お茶をいただこうと思ったんですけど、人様の冷蔵庫開けていいものかと」


「あー、うん。大丈夫だよー、好きなように使っちゃってー」


「すいません」
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