うそつき

歌い終わり、ユキちゃんは拍手。


僕は呆然。



「やっぱ生歌ってすごいね。雰囲気全然違うわー」


「…ふふっ、ありがとう」


そう言ってユキちゃんは僕にスマホの画面を見せてきた。


「これ、全部果乃ちゃんの楽曲です。聞いてみたらどうですか?」


「…あっ、ちょ」


果乃は僕がスマホを受け取る前に横からスマホをもぎ取った。


「…は、恥ずかしいから、だめっ」


今までで一番大きい声だ…。


「…こ、ここでは聞かないで…」



果乃は顔を赤らめて、アプリを消すとユキちゃんにスマホを返した。



「いいじゃん果乃ちゃん。私好きだよ?」


「…恥ずかしいもん、私の声で、収録してるし」


顔を赤らめたまま目をそらす果乃は本当に可愛い。


天使。


てか、自分の声だから録音機材だらけだったのか…。


「じゃあ、部屋から出れるようになったら地下室、使う?」


「…地下室?」


「そう、夜でも楽器使えるようにって地下に防音室があるんだよ。


しかも、録音機材もいいの揃ってるし、編集とかもそこでできるようになってる。


うちの家の楽器は全部そこにあるよ」



「…行きたいっ!」


「じゃあ部屋から出れるようになったら、地下室、案内するね」


「…うんっ!ありがとっ!」
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