うそつき
Chapter 2
「で?その、同居の女の子とはどうなった?」


「へ?」


「へ?じゃねぇ。アホみたいな声出してんじゃねぇよ」



苦笑いで俺のことを見ているこの男、沢城和馬。



この学校で一番人気のバンド『White liar』のギター担当。



この学校は長い歴史を誇る私立高校。



音楽に力を入れている面もあり、バンドや、吹奏楽の派手さも他校とは比べ物にはならない。



『White liar』は、どこかの中学校で結成され、そのメンバー全員がこの高校に進学、瞬く間に人気になったもの。



そこに和馬が入ったのだ。



ルックスよし、成績よし、運動神経よし、の三拍子揃ったモテる男を具現化したような男。



それが沢城和馬。



背が小さくてどちらかというと童顔、成績も運動神経も並にしかない僕とは雲泥の差だ。



そして、今、僕は学校にいます。


昼休みです。


バンド部の部室にいます。


軽音部ではなく、バンド部です。


バンド部員ではありません。



僕の音楽の経歴を知った誰かがこいつに教えたらしい。



つまり、勧誘されてます。



いや、話の内容は思いっきり逸れてるけどね?



「その、なにちゃんだ?かのちゃんだったか?どうなんだよ」



「顔もほとんど見てないし、ほとんど喋ってないよ。現状は声が可愛いことぐらいしかわかってないでーす」



「ふーん、まだまだだな」



「あー、あとみかんゼリーが好きだって」



「へぇー、今度買っていくわ」



「さんきゅ」



「てか、その調子で大丈夫なわけ?ばあちゃんとの約束守れねぇんじゃねぇの?」



「一応期限はないけど、早ければ早いほど嬉しい、とは、いわれたよね…無理かも」



僕の口から乾いた笑みがこぼれた。


< 5 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop