うそつき
「いろんな女の子に告白されて調子乗ってるんでしょ?


だから、私にキスしても、バレないと思ってたし、許してもらえるって思ってたんでしょ?」



「だから、なんで…」



すると、果乃の目には涙が滲み始めた。



「唯兎くんは、私がどういう気持ちで唯兎くんと一緒にいるか、本当にわからないの…?」



そういうと果乃は涙を拭いて何事もなかったかのように僕から手を離し、立ち上がった。



「ごめんね、私、おかしいよね。頭、冷やしてくる」


果乃は痛々しく笑うと、ドアの方へ歩く。



なんだよそれ。



散々いうだけ言ってせこいんじゃないの?



果乃がドアに手をかけた時、僕は果乃の手を掴んだ。



そして、僕の方に体を向けさせると、ドアに押し付ける。



側からみると一般にいう壁ドンと言われるものをしているわけであって。



「な、なに…?怒ってんの…?」


「散々言っといて、怒らないわけないでしょ?」


「いや、それは…」


「果乃の気持ちは、果乃が言わなきゃわかんないでしょ。

僕はわかんない」


「ごめんって…」



果乃が下を見て、全然視線を合わせないから、顎を持ち上げる。



「唯兎くん…?」



「キスってさ、普通好きな人にしかしないでしょ」
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