うそつき
【果乃side】


3年前。


私が中学1年生の時、姉の彩乃は中学3年生だった。


当時、私は幼馴染の柚月、咲良、千都とバンドを組んだところで、楽しくて仕方がない時期だった。



たった一つを除いては。



その例外は姉、彩乃の存在だった。


地味な私とは違って美人ですごくモテて、告白も絶えなかった。


私が自慢できたはずの運動とか、勉強とかそういう平均よりも上の位置にいたことでさえ、姉さんには敵ったことはなかった。


私が気になった人はみんな姉さんを褒めて、好きになった人は姉さんに告白した。



近所の人だって、「姉の彩乃ちゃんはなんでもできるのに果乃ちゃんは不器用ねぇ」とよく言った。



それほど、姉さんは人を惹きつける魅力があって、それを持っていない私は姉さんの影に埋もれてしまっていた。



劣等感。



姉さんに抱く感情はそれしかなかった。



姉さんのことが嫌いなわけじゃなかった。



面倒見が良くて、優しくて、友達思いな姉さんが自慢だった。



だからこそ、そういう感情を抱いてしまった。




でも、唯一。



姉さんよりも私のことを好きと言ってくれた人がいた。



それが千都だった。




「彩乃なんかより、果乃の方が可愛くて、素直で好き。俺は」
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