うそつき
こんな少しの会話でも、千都が取られた気がしてしまっていた。



そのことに気を取られて、後ろから来ていた車に気づいていなかった。



「危ないっ!!」



そう言われた時には私はすでに道路に倒れていた。



「いったい…」



打ち付けた腕を支えながら痛む身体を起こすと、止まった車の前方に姉さんが倒れていた。



道路は赤黒く染まって、姉さんは動かなかった。



「あやちゃん…?」



私は姉さんに近寄ろうとした。



でも、足がいうことを聞かない。



見ると、私の左足からも血が流れていた。



あぁ、姉さんが守ってくれたのに…。



怪我をしていたら世話がない。



無理をして立ち上がって姉さんに近づいてすぐ横に座り込む。



「あやちゃん…起きてよ…あやちゃんっ!」



涙が止まらない。



あんなに劣等感でいっぱいだったのに。



姉さんが喋らなくなった途端、不安になっちゃうじゃん。



ぶつかって来た車の方を振り返ると、男が車から降りて来て、私を持ち上げて車の中に放り投げた。



身体がミシミシと痛む。




何…嘘…、私、連れ去られるの?



車は後ろに進んで、千都の横を通り過ぎた。
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