うそつき
あぁ、この人、自分が起こした事故だってバレないように、私をさらおうとしてるのか。



千都には気づかなかったんだね、事故の衝撃で車の影に飛ばされちゃったからね。



案外落ち着いていた。



事故にあって、大量の血を見て、自分からもそれが流れていて、疲れていたんだろうと思う。



それでも事の重大さに気が付くときは現れる。



その時、初めて人を怖いと思った。



犯人は人相が悪くて背が高く思えた。



実際、並んで犯人を見たことがないからわからない。



でも、そのせいで特に背の高い人相の悪い人と目も合わせられなくなった。



そのことに自覚したのは警察に保護されたとき。




私は手錠と足枷をつけられて、男の家に閉じ込められていた。




私が警察に保護されたのは誘拐されてから2週間たった時だった。



保護しに来た警察でさえも怖く思えた。



家宅捜索で入って来た警察のほとんどは男の人で、部屋に入って来たとき、恐怖心を抱きすぎたせいか、ベットから転がり落ちた。



痛かった、とても。



落ちた痛みもあったけど、



人を怖いと思ってしまった自分の胸が本当に痛かった。



これからはきっと誰とも話せなくなってしまうんだろう。


そうとしか思えなかった。
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