うそつき
そんな彼女の手にはアコギが。



譜面はなかなか難しそうなもの。



「これ、弾けるの?」



「…た、ぶん?」



そういうと、天使は姿勢を正し、ギターを鳴らした。



あぁ、この子は、あれだ。



めちゃくちゃ才能ある子だ。



人を魅了させる弾き方。



多分、僕よりうまいや。



アコギの音色が生きてる。



普段の彼女とは全く違う。


漂っている雰囲気が、オーラが、まるで別人だった。


「上手だね」



「…うん。ずっと…弾いてたから」


恥ずかしそうにポリポリとほんのり赤くなった頬をかく。



「…唯兎くんも…弾けるんでしょ…?」



頬を赤らめたまま言うから、それはもう可愛くて。



「ひ、弾けるよ!?」



声が上ずるくらいに緊張してしまった。



うん、多分顔赤い…。



「…おばさんから、聞いたの。唯兎くんも…上手って」



「最近弾いてないから多分上手には弾けないや」



すると、天使は僕にアコギをぐいっと差し出した。



「ん?」



「…弾いて?」



そう言って僕にアコギを押し付けると、立ち上がってパタパタと本棚の方へ行き、背伸びをして楽譜を取り出した。


「…これ、弾いてみて欲しいの…」
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