うそつき
「いっとくけど、こういうことするの今回だけ。


次からは迷わず俺が迎えに行く」



千都なりの優しさ。


これはわかりにくいよ、ユキちゃんみたい。



「ありがとっ、行ってくる」



…と言いつつ走り出したものの、やっぱり女の子というのは厄介なのか、たくさん呼び止められる。



なんで僕走るの遅いんだろう、こういうとき不便。



中学の時、テニス部だったんだけどなぁ…。



ようやく、女子を巻いて昇降口に着いたときには、果乃の周りにできた人だかりは二倍ほどに増えていた。



「…嘘でしょ」



半ば泣きそうになりながら人だかりの近くまで走って行く。


すると、なぜか僕の周りに道が開く。


…なぜに?


な、なんだ?



僕の目の前が開けたとき、果乃は輪の真ん中でしゃがみこんで大泣きしていた。


「唯兎くんんんんんん」



僕の名前を叫びながら。


それは、道が開くよー…。



「果乃…」


「あ、唯兎くん…」



果乃はコートの下に白いニットに赤色の短いスカートを履いていた。


可愛い…。



「なんで来ちゃったの」


「だって、唯兎くん遅いんだもん…。だから待てなかったんだもん」



泣きながらそう訴える果乃はめちゃくちゃ可愛い。


誰にも見せたくないな、この子。
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