うそつき
「果乃は見たことないの?」


「おうち、隣町だったから。


ここまで大きいツリーはなかったよー」



「そーなんだー」



果乃は口を開けたままツリーを見上げている。



「あ、でも、近所のパン屋さんに家庭用のやつが二つぐらい置いてあったよ?

あやちゃんと2人で飾り付けの手伝いしてた」


「ほえー、仲良しさんだね」



最近。


果乃はよくお姉さんの話をしてくれるようになった。


吹っ切れたんだったら、嬉しい。



「パン屋のおじさん、お手伝いしたら売れ残っちゃったパンくれるの。時間経っててもとっても美味しいんだよ?」


「いいじゃん。僕も食べたい」


「今度行こ?ちょっと遠いけど。


この間おばあちゃんから聞いたんだけど、まだお家売ってないらしいの」


「え?そうなの?」


「うん。今もまだ二週に一回お掃除屋さん入れてくれてるんだって。


あやちゃんの写真があるはずなの。ついでに取りに行きたいな」



果乃はツリーを見上げたまま懐かしそうに話す。



「いいよ、行こう。次の休みにでも」


「んーん、ダメ」



果乃は少し笑って首を振った。



「私、目標できたの。あやちゃんに甘えるのはそれを達成できてからなの」


「目標…?」
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