思い出はきれいなままで
「頼む。俺の話を聞いて。もうキスも何も絶対にしないから。誓う」
真剣な瞳を見て、私は覚悟を決めて、ゆっくりと家へと足を踏み入れた。

目の前に光る夜景と、モデルルームの様なリビングは成功者の証を見るようで、私は初めてみるその光景に立ち尽くした。


「座って」
言われた通りに、ソファに座ると落ち着かず自分の指をジッと見つめた。
そんな私の目の前のソファに座ると、社長は私をジッと見つめた。

「いつから気づいてた?」
え?
その質問に驚いて顔を上げた。

「いつからって……初めからです。名字が違うからもしかしたら生まれた時に離れ離れになった双子のお兄さんがいるの?とかいろいろ思いましたが……」
「思ったけど?」
私が言葉を濁したところで、社長は続きを促した。

「思いましたが、食事に行って近くで感じた気配や、雰囲気で絶対そうだと思って……あのキスで確信しました」

「そうか」
俯きながら小さく呟くように言った社長の表情からは、今何を思っているのか、何を感じているのか全く分からず、私も俯いた。


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