思い出はきれいなままで
「私がいつ社長を嫌いって言ったんですか?」

「え?」
私の問いに、今度は社長が聞き返した。

「だって……。お前俺がキスをしたことを、嫌がってたって……」

「そんな事ない!私があのキスがどれだけ嬉しかったか分からなかったの?」
なんでそんな事に?
ぐちゃぐちゃの気持ちに、耐え切れず涙が零れる。

そんな私に慌てて社長が、私の頬を包み込んで涙を拭いてくれる。

「嬉しかった?あの海辺のキス?」

温かい手に包まれたまま、私は社長を見つめ返し「嬉しかった」そう呟いた。

「じゃあ、なんで……あっ!」

何かが思い当たったようで、社長は口元を手で覆った。


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