思い出はきれいなままで
一人でコンピューターに向かいたい時間が多いため、このようなつくりになっていると室長から説明を受けた。

「こっちへ」
「……はい」
てっきり前の部屋で行うと思っていた私は、初めて入る社長の部屋に少し戸惑いを覚えた。

「そこに座っていて。着替えてくる」
そう言うと、社長はもう一つの扉の中に消えて行った。

着替える?
もう一部屋会ったことにも驚いたが、そこで、着替えたりしていることに更に驚いた。

私は言われた通り、コンピューターがたくさん置かれた社長の大きなデスクの前の、ソファに腰を下ろした。

ブラウンとホワイトを基調とされた部屋は、落ち着く空間だった。

「お待たせ」
先ほどのスーツとは違い、ラフなシャツに短パンという格好の社長に、私はまたもや大学時代を思い出した。
年月は経ってはいたが、ほとんどあの頃と変わらない先輩のような気がした。


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