飴と傘
 結局、響と社長は仕事に戻らなかった。みんなで職場近くの和食屋に行き、途中から合流したミズモリケントも交え、終電まで飲んだ。


「『Rain』のイメージで、っていうのは結局、どうなったんだろうな? もとは、雨の雰囲気の曲を依頼されたわけじゃなかっただろ?」

 地元駅の出口で傘を広げながら、響が思い出したように言った。

「何となくは残ったんじゃない? それにいいのよ、ミズモリさんが満足したんだから」

「そうかな……」

「そうよ」

 しばしの沈黙。

「花音」

「なに?」

「飴、あれがいい。京都の繊細なやつ」

 ――決めてくれた。これで、飴問題も解決だ。


 人通りのない深夜の道に踏み出すと、傘に当たる雨の音が私たちを包み込んだ。



(了)
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