飴と傘
萩岡係長が悩み初めて三週間が経った頃。

 私は銀行に用事があって、有休をとった。夕方に帰宅して一息つくと、それまで晴れていた空が急に暗くなり、雷鳴が轟いた。そして間もなく大粒の雨が窓に叩きつける。

 今朝、響は傘を持っていかなかった。折り畳み傘も、いつもの棚に置いたままだ。大人だから放っておいても良いのだろうが、届けてあげたくなった。

 会社に着いたのは六時過ぎだった。私は地下の駐車場を通り抜け、奥にあるKSJCの部室に向かった。さすがに職場に届けるのは憚られるので、ここで響と待ち合わせようと、地下鉄からメールをしておいた。それに、萩岡係長がいるはずだ。
< 6 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop