ラッキーナンバー
 


「本当だよ、坂下さんが素直になれば、きっと上手くいく」



そう言ってくるめくんは、私に笑いかけた。

素直に…かぁ……



「できるかなぁ?私に」

「頑張って」



はい、と言ってくるめくんが私に傘を渡す。



「え………」

「頑張って上手くいった時に、返してくれたらいいから」



笑顔のくるめくんの顔が、あの時の景色と重なる。


中学3年生の頃、学校見学会に行った時

あの時も雨が降っていて、名前も知らない男の子が、私に傘を貸してくれたんだ。



『お互い頑張って受かろう、傘はその時返してくれたらいいから』



そう言って私に笑いかけたくるめくんが

私はずっと好きだった。

今でも、もちろん。



「じゃあ、また」



いつまでも…

大好きな人



だけど、1番じゃない



「ありがとう」



雨の中を走って行くくるめくんの後ろ姿に、私は傘をギュッと握り締めて、小さくお礼を言った。



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