俺の彼女が一番可愛い!
「綾乃ちゃんともまあ話すな、ってくらいの距離間になったときに綾乃ちゃん、仕事で何かミスしちゃったみたいで、すっごい酔っ払っちゃったことがあって。で、帰り送っていきなさいってオーナーの一押し。」
「オーナーさんーーーー!めっちゃいい人じゃん…。」
「うん。で、ふらふらだからおんぶしましょうかって言って、綾乃ちゃんは渋々背中に乗ってくれて、でも何度もごめんねって言われて。だからごめんねって言われない立場になりたい…って思ったら口が滑ってた。」
「なんて言った?」

 凛玖はやや前のめりになりながら、そっと尋ねる。

「え、っと…普通に、綾乃さんのこと好きなのでって。」
「…突然の男気…なに、恋愛経験値高め?」
「全然。綾乃ちゃんが初めての彼女だよ。」
「…マジ?」
「まじ。」
「いやでもすごいな。…言える気がしない。全然自信ない。」
「自信かぁ…。全然ないし、今もないけど…でも、綾乃ちゃんが笑ってくれるからいいかなって。」
「それは彼氏だから言えるんだよ。」
「それも…そっか。」

 もう今の凛玖の位置は通り過ぎてしまっているからこそ言えることでもある。

「えっと、その、相手の方は、何してる人なの?」
「小学校の先生。俺の姉の子供の学校にいる。」
「先生かぁ…忙しい仕事じゃない?」
「忙しそう。ぐったりしてるときも結構あるよ。」
「そうだよね。…うーん、自信がどうしたらつくかなって考えてたんだけど…難しい。」
「…頼みがある。」
「うん?」

 突然神妙な面持ちになった凛玖は口を開く。

「…料理、って、できるようになるか?」
「…練習、すれば、うん。できるようになると思うよ。」
「教えてくれたり、する?」
「それが自信になるの?」
「…できること増えたら、自信になるよな?しかも年上彼女をもつお前の武器にも見える。」
「…武器、までいかないけど。でも、いいよ。できる料理なら教えられる。問題は場所かな。」
「俺んち実家なんだよな…。」
「綾乃ちゃんに聞かなきゃわかんないけど…でも、綾乃ちゃんは多分面白がってオッケーって言いそう。」

 ラインで連絡を入れて数分後、健人の予想通り『なにそれ面白すぎる!私が帰るまで絶対に引き止めておくこと。』という返事が来た。
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