俺の彼女が一番可愛い！

＊　＊　＊　

　食材を買い揃えて、帰路につく。

「…綾乃ちゃんが帰ってくるまでいてね。」
「…俺、会っていいのか、よくわかんないけど。」
「綾乃ちゃんには話してあるから大丈夫だと思うよ。むしろ会ってみたいんだと思う。」
「なんで？」
「恋バナ聞きたいんだって。」
「っ…！」

　顔が赤くなる凛玖の姿を見て、健人は小さく笑った。

「じゃあ手を洗って、早速やろうか。なんか綾乃ちゃん、早く帰ってくるみたいだし。」
「何からやればいい？」
「生姜焼きは割と簡単だから、そっちからやろうか。えっと、脂身とってもらっていい？これハサミね。これでここを切り落とします。あ、自分の分は好きにしてもらっていいんだけど、俺も綾乃ちゃんも脂身が苦手で、いつも切っちゃうんだ。」
「俺もあんま好きじゃない。切ったやつここ？」
「うん。お願いします。」

　その傍らで、健人は生姜焼きのサイドに置く千切りキャベツを切っていた。

「なにその手際！」
「え？」
「指切んないの？」
「うん。もうバイト先でもやってるし、うちでもやるし…こういうのも慣れ。今日は時間ないから味付けだけ教えるね。」
「おー。」

　凛玖の手際も悪くはない。あっという間に切り終わった。

「じゃあ味付けというか、しばらく浸しておくから。えっとこれとこれを、大体一周くらい。」
「え、測んないの？」
「うん。ざーってぐるっと一周くらいずつ。」
「まじ？」
「まじ！はい、迷わない！」

　そんな時、ガチャリ、と鍵の開く音がした。

「ただいまー！」
「おかえり！」

　いつもなら迎えに行くが、今日は手が離せないから声だけ少し大きめにしてみる。