俺の彼女が一番可愛い！

「おっ！やってる～！」

　仕事後とは思えない元気さで帰ってきた綾乃はにっこりと笑った。

「はじめまして。岡田くん、で合ってるかな？」
「はい。お邪魔してます。」
「あ、全然リラックスしてね。着替えてくるね！」
「はーい！」

　綾乃は寝室に向かう。

「…なんか、イメージと違った。」
「え？」
「咲州の彼女だからふわっとした感じかと思ったらすごい仕事できそうな人じゃん。」
「あはは。うん、綾乃ちゃん、お酒飲まないとふわっとしないよ。仕事はめちゃくちゃできる人なんだと思う。だから割と繁忙期は残業も多い。」
「へぇ…。ていうか、本当にさぁ…。」
「ん？」
「そうかなとは思ってたけど、なんか、咲州の彼氏力も強い。」
「え、そうかな？」
「同棲の力だな、多分。」
「そう、なのかなぁ。他を知らないから。」
「…ちょっとずれてるよな、うん。」
「多分？」

　おそらく、いわゆる普通の男子大学生と同じ、ではないだろう。その自覚は健人にもある。

「よし、じゃあお肉は完成。あとはご飯は早炊きにしちゃわないとだめだから…。お米を研いでもらっていいかな？」
「おう。それくらいはできる。」
「進んでるー？」
「ごめんね、帰ってきたのが遅いからまだできないよ、夕飯。」
「ああ、いいよ全然。しばらくは二人の様子見てチューハイでも飲んでるからさ。」

　綾乃はいつにも増して機嫌がいい。にこにことにやにやが半々くらいだ。

「…え、お酒、飲むの？」
「なんで、だめなの？」
「だって、お酒弱いじゃん。」
「そうだけど、恋バナするもんね、岡田くん！」
「えっ…いや、あの…大丈夫です、しなくて。」
「え～！つまんない～！恋バナ要員でしょ、岡田くんは！」
「おい、お前何話したんだよ！」
「何って…好きな人が年上ってこと？」
「っ…お前なぁ！」

　綾乃のにこにこが加速する。

(へぇ～…健人って同い年の男の子と話すとこんな感じかぁ。)