俺の彼女が一番可愛い!
「とりあえずくっつくことにしてるから。」
「え?」
「甘えたいとき、健人に言いたいことがあるときは、とりあえずくっついてみることにしてる。これも、私的には甘え。」
「可愛いなぁー…もう。それはただ俺が嬉しいだけなのに。」

 照れ隠しでもある、とは言えない。ここはプライドの問題だ。

「とりあえずくっつくっての、いいね。」
「でしょ?」
「俺も…あ、もう結構やってるね?」
「そうだね。でも、それはただ私が嬉しいだけだから。」

 桜の花びらが降る中、隣にいる健人がにっこりと微笑む。

「あ、そうだ!」
「なぁに?」
「写真撮ろう!ほら、私達あんまり自撮りしないからさ。」
「そうだね。せっかく桜、綺麗だし。」
「うん。」

 綾乃はスマートフォンを取り出した。

「え、待って。絶対健人入んない…縮んで!」
「これだと桜入らなくない?」
「腕がもっと長ければ…!」
「絶対俺が撮る方がいいじゃん。貸して。」
「腕の長さは負ける…。」
「もっと負けていいんだよ、綾乃ちゃん!」
「それは嫌だけど今は仕方ない。あー確かに健人の方がいいね、撮るの。」
「でしょ?」

 どうにかスマートフォンの画面の中に二人の顔と桜を押し込む。

「撮るよー!」
「はーい。」

 カシャッと音がする。二人ともいい笑顔だ。

「あんまり写真、撮ってこなかったからさ。これからはもうちょっと撮ろうか?」
「うん。そしたら思い出、振り返れるしね。」
「じゃーもうちょっと歩いて桜見よっか。あ、ボートもあるみたいだし。ボート漕ぎたい!」
「そこは俺の出番じゃないの?」
「えー漕ぎたい。」
「じゃあ、綾乃ちゃんが疲れたら交代ね。」
「疲れないしー!」
「えー…そうきたかぁ。」
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