俺の彼女が一番可愛い!
「綾乃ちゃん、今日早かったの?」
「定時だったよ!なんか久しぶりにおかえりって言った気がする。」
「うん。いつも俺の方が帰り早いもんね。」
「でも一人辞めちゃったんでしょ?」
「そうなんだよね。だから夜シフトが増えそうで…。」
「じゃあ私がおかえりって言うのが増えそうだね。」

 酔っているからか頬が赤くて、笑い方もちょっと幼い。そんな綾乃はレアだ。そしてそんなレアな綾乃を見て、健人の方も少し赤くなってしまう。

「…綾乃ちゃんのそういうとこ、ほんとさぁ…。」
「え?」

 綾乃の左隣に座り、綾乃の肩にそっともたれる。

「…どうしたの?」
「おかえりって言えないの、寂しいなぁとか思ってたの吹っ飛んじゃった。」
「そこで寂しいってちゃんと言うから健人は可愛い。」

 そう言って、綾乃は左手で健人の頭をくしゃくしゃっと撫でる。それが心地よくて健人は目を閉じた。

「あ、そうだ。今日、面白いっていうかびっくりすることがあったんだよ。」
「へぇ~珍しい。どうしたの?」
「…ていうか、オーナーのせいなんだけど、今日大学生がたくさん来てて、それでオーナーが俺に年上彼女がいるってことをその人たちに言っちゃったのね。」
「うん。」
「そしたらその中の一人に、同じ大学だろって声掛けられて。」
「え、何で分かったの?」
「講義被ってたみたい。」
「健人はなんでわかんなかったの?」
「…あんまり他人に興味がなくて…。」
「まったく~!それで?」
「その声掛けてくれた人、岡田さんっていうんだけど、岡田さん片想い中なんだって。年上の人だから、なんか話聞かせてくれって言われて…。」
「へぇ~!健人が恋愛相談されるの?めちゃくちゃ珍しくない?」
「…綾乃ちゃん、楽しんでるでしょ。」
「え、だって楽しいじゃん。女友達からの相談ならちょっとって思うけど、男友達が増えてしかも相談って、若くて楽しくない?」

 完全に楽しむ顔になっている綾乃の髪から雫が滴った。そういえば乾かすのを忘れていた。

「綾乃ちゃん!ドライヤー忘れてた!」
「今日は私が健人のやってあげるよ。」
「ありがとう!」
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